遺伝子診断やSTAP細胞など、遺伝子にまつわる話題が注目を浴びています。

遺伝子工学技術の代表的なものとして遺伝子組換えがありますが、遺伝子組換えの基礎となる技術に新たな発見がありました。

遺伝子組換えは、電子顕微鏡でも見えない小さいDNAの特定の場所を切りとって、他の生き物に入れる、ということを行いますが、そのためには制限酵素というDNA切断酵素が必要です。実はこれまで数百種類見つかっている制限酵素はDNAの構造のうち糖とリン酸の結合を切ることでDNA鎖を切断していると考えられてきましたが、今回見つかった制限酵素は全く新しい切断様式であることが明らかになりました。

 この酵素は温泉などに住む超好熱古細菌Pyrococcus abyssiという細菌から見つかったR.PabIと呼ばれるものです。東京大学の田之倉優教授らによってその立体構造が決定されました。この酵素は特徴的な立体構造をとることが知られており、G、T、A、Cという順番に並ぶ箇所を見つけるとTとAの間でDNAを2本に切り分けます。

しかし、どの分子に働きかけてDNAを切断しているかに関しては不明なままでした。
 

そこで今回、R.PabIとDNAを一緒に結晶化し、X線結晶構造解析を行うことで酵素がどのようにDNAに働きかけるかを調べました。結果、酵素がDNAを90°折り曲げ、糖からA塩基を外していることが明らかになりました。塩基が一部抜けたDNA鎖は構造が不安定になり、熱による分解や、他の酵素の働きによって2つに切断されていました。
 これまでにこのような切断様式の制限酵素は一切知られていません。これは世界にはまだ新しい制限酵素の世界が広がっていることを示しています。制限酵素の使い分けが進んだり、効率の良い切断を行う酵素などが見つかるなど、今後いろんな種類が発見されていけば、遺伝子工学が発展するかもしれませんね!

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